ドイツ出身のベニー・グレブは、驚異的なテクニックとスピード、洗練された音楽センス、さらにユーモアたっぷりの遊び心も併せ持った、オールラウンドなハイテク・ドラマー。また楽器以外の物でも、叩けば自分の音楽にしてしまう奇才の持ち主でもある。彼がこのDVDでテーマにしているのは「日常会話をするような感覚で自由にドラムを演奏する」ということ。それを系統立てられた独自のカリキュラムによって、基本から分かりやすく解説してくれる。本編は大きく4章に分割されていて、それぞれが「文字」「単語」「文法」「会話」といった段階的なテーマに添って進行していく。まず第1章では、16分音符と3連符の基本音形の可能性を全てピック・アップ。これをアルファベットの“ABC”のように捉えて、1文字づつ確認するところから始まる。最初は極めてシンプルな基本練習であるが、徐々にアクセントやダブル、フラムなどのルーディメンタルな要素を絡めた音形に移行し、最後にはバスドラやハットなどのセット・コーディネーションにまで昇華していく。この膨大な音符の可能性を網羅しながら、筋道を明確に発展していく様子は、実に合理的であり感動的でもある。続く第2章では、16分音符を3、4、5という単位でグルーピングした1小節フレーズを使った単語形式のエクササイズ。さらに第3章では、それらを細かく組み合わせて2小節フレーズを作る方法が提示され、文法を学ぶ感覚へとステップ・アップする。各フレーズを応用発展させる手法は最初の章にならっているが、フレージングがどんどん音楽的なっていくことで、テクニカル・ドラマー達がどの様なコンセプトで難易度の高いフレーズを演奏しているのかがよく理解できる内容になっている。そして最後の章では、即興演奏のための練習法やタイム感覚を鍛える効果的な方法を多数紹介。さらには個性的な音色を得るための様々な奏法も伝授してくれるが、これには台所用品などを使用したユニークなアイデアも多数含まれ、その独創性にも感心させられる。他にも合間に挿入された演奏シーンや、ボーナス映像でのクリニック・ツアーのパフォーマンスなど、彼がいかに幅広い音楽とテクニックに精通しているかを知ることの出来る見所もたっぷり収録。付録冊子には各項目の基本の譜面も掲載されており、専門学校的なハイレベルなテクニックに磨きをかけたいという中上級者にはもちろん、しっかりと基礎から論理的にテクニックを学びたい初心者にとっても、大いに参考になるはず。とにかくドラミングに必要な要素をシステマチックに網羅して、それを深く掘り下げたこの驚異のカリキュラム!ぜひ多くのドラマー達に体験してもらいたい。 長野祐亮